SAS対HOU(第2戦)〜スパーズの次の手〜

第一戦の記事をまだ見てない方はこちら→http://minnesota.hatenablog.jp/entry/2017/05/04/025404

※ 水色→パス。黄色→オフェンスの動き。赤色→ディフェンスの動き。緑色→スペース。

 

スパーズ対ロケッツ @第2戦

シーズン6戦目の対決となる両者。

お互い手を知り尽くした状態でどういった攻防を見せるのかが見どころの試合であった。

前回成功率が0%だったスパーズのポストプレー

ロケッツのポストの守り方に対してスパーズがどういったポストプレーを見せるのか。

その他に、大敗した1戦目は何が悪かったのか、止めるべきはハーデンなのか。

そういった課題を名将ポポビッチがどう解決していくのか見ていこうと思う。

 

ポストプレーの少しの変化

前回、数あるポストの守り方からダントーニHCは「ノーミドル、ウィークトラップ」を採用していた。

決まりごとは3つ。

①ドリブルをついた後に仕掛ける

②逆ローポのディフェンスがダブルチーム

③ノーミドルスタンスからウィークサイドに誘い込む

その徹底した守り方は、「成功率0/10」とスパーズを苦しめるのに十分すぎる結果となった。第2戦ではどういう守り方をダントーニが採用するのかに注目が集まったが、成功しているのだからわざわざ変える必要はない、と結論づけたのだろうか、その守り方は前回と全く変わらなかった。

 

いきなりだが、これはある有名なラーメン店の店長のインタビュー。

「この店が大人気の秘訣はなんですか?もう何年も行列が無くならないですが。」

「ここに来る常連さんはね、ここは味が何年も変わらないから大好きなんですよ、と言ってくれるんです。けど実は僕、ラーメンの味を少しづつ変えているんですよ(笑)おかしいな話でしょ?味を変えているのにそれを食べに来るお客さんは〈変わらない〉と言うのだから。それはなぜか?人の味覚というのはね、少しずつ変わっていってるんです。だから同じ味のラーメンを作り続けてるとだんだんお客さんの味覚と合わなくなるんですよ。そうならないように僕は味覚に合わせて味を少しづつ変えるんです。ほんとに少しづつ。そうするとね、不思議とラーメンの味が変わらなくなるんですよ。面白いでしょ?味を変えたことで味が変わらなくなるんですから。でもそれこそが何年も行列ができる秘訣だと思っています。」

 

 なぜこの話をしたかというと、僕はこの理論がバスケットでも当てはまると思っているからだ。

ポストプレーの話に戻そう。

第2戦のスパーズのポストプレーの成功率は7/21(33%)であった。決して高い数字ではないが、前回が0%だったと思えば33%は満足のいく数字と思ってもいいのではなかろうか。

実際にドフリーでのシュートクリエイトもポストプレーから計3回。実質50%の成功率と言っても過言ではないだろう。

ではなぜロケッツはここまでやられてしまったのだろうか。

それはポポビッチが2つの少しの変化を加えたからだと思っている。

 

1つ目はこのポストプレーの場面。

これが第1戦のポストプレー

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続いてこれが第2戦のポストプレー

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リーをウィングに移動させ、パス出しさせた後、元いた場所(ローポスト)に戻る。

なんの気なしのこのプレー。通常であれば特に意味もない動きである。しかし逆ローポからダブルチームに行くことをルールとしているロケッツにはこれが効く。リーがウィングに上がることでローポストをまず空ける。この時点でヘルプはアリーザとなるが、その後リーがまたローポストに戻ることで誰がヘルプに行くべきなのか混乱させることができた。

ネネはノーミドルのスタンスを取ってしまっているため、ダブルチームに来ないとなれば、後はオルドリッジの独壇場だ。

実際にこの試合では迷いなくシュートを打てていた。

 

2つ目の変化はレナードのポストアップ。

第1戦でドライブとスリーに徹していたレナードだが、この試合ではポストプレーを6回して、6回のうち2回の成功と2回のドフリーのシュートをクリエイト。

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オルドリッジがパサーになり、ハイローのためにガソルがフラッシュ。ビッグマン2人がアウトサイドに広がることでゴール下に広大なスペースが。

これにはロケッツもダブルチームで対応せざるを得なかった。

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がしかし時すでに遅し。完全に後手となったロケッツは、4Qで失速。最後はビバリーのミスショットを皮切りに2戦目を落とす形となった。

 

ロケッツの反省点としては1戦目から守り方を変えなかったことだろう。仮に第3戦も同じ守り方をするようであれば形勢がひっくり返る可能性すらある気もする。

つまり言いたいことは、相手を0%に抑えた戦術だったとしてもこのレベルでは、同じ戦術は通用しない。ということだ。

これはラーメンの話と被りはしないだろうか?

たとえ今流行っていた(通用している)としても少しずつ味(戦術)を変えてかなければ必ず飽き(対策)がくる。

ダントーニに足りなかったのはそういうとこなのかもしれない。

 

②ハーデンのピックの対応はどうなった?

ヘッジ→6/12

ヘッジ&ローテ→0/1

前回同様、今回もヘッジからローテーションする回数は少なかった。

ローテーションをしたくなかったわけではない。出来ない理由があったのだ。

 

ハーデンに対するダブルピックの場面を見て欲しい。 

これは前回のダブルピック。

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これが今回のダブルピック。

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前回はロケッツのダブルピックに対してスパーズがどうアジャストしたかというと、ガソルが下がりすぎないことでスクリーンと同時にローテーションしてたわけだが、それに対してロケッツは2枚目のスクリーナーがスリップすることでローテーションを阻止していた。

オルドリッジからしてみればガソルがローテーションしてくれるものだと思っているので、対応も遅れてしまった。結果、キックアウトからドライブされ失点。

ヘッジに関しては今回もロケッツの方が一枚上手だったと言えるだろう。

 

サグ→6/12

ソフトヘッジは、見落としてない限りでは今回はしていなかった。

特にアウトサイドのディフェンスが危ういガソルは徹底してサグで対応。とにかくレイアップとアリウープをさせないという意識を強く感じた。実際にハーデンのレイアップをブロックする場面も。

一方、サグのデメリットはジャンパーとフローターであるが、ロケッツはそもそもジャンパーはしてこないチームのため、プルアップに関しては気にする必要がない。問題のフローターだが、これに関しては捨てたと言うべきか、もう外れることを祈っている感じだった。

 

スイッチ→5/9

やはり今回も成功率が1番高かったのはスイッチディフェンスだった。

前回同様、方向付けをウィングの方にし、スリーを打たせていたが、特にこれといって目新しいことは無かった。

 

アンダー→1/1

アンダー&ヘッジ→1/1

ハーデンに対してアンダーをしたレナードだが、まあたまたまやっただけといった感じ。

でもこういうのはかなり効果的だと思う。

もちろん毎回アンダーとなると話は変わってくるが、要所要所でアンダーすることで、ハーデンにも迷いが生まれるはずだ。

2回中2回ともシュートを外してしまったのも偶然ではないと思う。

 

今回、ピック対策としてポポビッチが出した答えと言えば、それはアンダーソン対策かもしれない。

ポポビッチが取った作戦はダニーグリーンをアンダーソンにマッチアップさせることだった。

画像はハーデンとアンダーソンのピックプレーのシーン。

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これをスイッチで対応するスパーズ。

当たり前だ。ディフェンスはレナードとダニーグリーンなんだから。

そう、これこそがポポビッチの出した答え。

前回、アンダーソンについていた選手はオルドリッジだったが、アンダーソンのピック→ポップアウト→スリーのパターンをスパーズは全く止められなかった。

そこで今回はダニーグリーンをアンダーソンにマッチアップさせることで、スイッチが容易に可能となり、ハーデン×アンダーソンのピックプレーを防ぐことに成功した。

これは第3戦以降も続けていくべき守り方かもしれない。 

 

 ③kawhisolationの是非

ハーデンとマッチアップ時→9/23(39%)

ボールマン以外をついてる時→10/24(41%)

 

今回はピックだけでなく、レナードがオンザコート時にロケッツが打ったシュート(一部例外あり)のパーセンテージを出してみた。

結果はご覧の通り、パーセンテージはどちらも変わらなかった。

正直ハーデン自体のパフォーマンスが良くなかったのであまり参考とはならない数字となってしまったが、ターンオーバーを誘うという点では、レナードがボールマン以外をついている時の方が誘発できていたと思う。

 

《ケース1》

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《 ケース2》

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《ケース3》

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バスケット経験者だから身に染みて分かる。

カワイが3線にいることの恐怖を。

kawhisolationとは本当に効果的な戦術なのだろうか。もしそう感じている方がいるのであれば、数字だけに囚われず、もう一度自分に問いてみてほしい。

 

④両者のセットプレーとその対応

スパーズと言えば、motion offense。

第2戦では、初っ端からmotion offenseを使ってきたスパーズ。

注目したいのはスパーズのmotion offense…ではなく、それに対するロケッツの守り方。

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セットオフェンスには、実は防げるタイミングが各セットに存在しているのだが、motion weakを防ぐタイミングはダウンスクリーンで選手が上がってくる時。

ジャズやキャブスも過去にこのやり方で守っていたが、これは完全に相手のセットを読んでいなければ防ぐことは難しい。

つまりロケッツはスパーズのセットを完全に読んでいたということだ。というよりアリーザとハーデンが。(ハーデン…やればできるじゃん。毎回やれや…)

 

それだけじゃない。ロケッツが完全に対応しきったシーンはもう一つ。

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これは最もオーソドックスなエレベータースクリーンのセットであるが、このシリーズに一度もやっていなかったのと、4Qの初っ端にやることでかなり意表を突いたセット、のはずだったのだが…蓋を開けてみれば、またもロケッツの完璧な対応でこのポゼッションを守ることに成功した。

 

しかし、やられてばかりじゃないのがスパーズだ。今度はロケッツのセット。

ロケッツと言えば、スクリーンザスクリーナーを得意としているが、これも注目したいのはロケッツのスクリーンザスクリーナーではなく、スパーズのその対応。

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スクリーンザスクリーナーも同様、防ぐタイミングは、スクリーナーが上がってきたところをウィングの選手とスイッチすることだが、それを完璧にこなしたスパーズ。

実際にこの試合のロケッツのスクリーンザスクリーナーの成功率は0/2と、今度はスパーズがロケッツのセットを完全に読み切る形となった。

 

 

 

このように、両チームともに奥の手を少しづつ出してきてはいるが、今のところ両者譲らずと言った感じだ。

お互い、次はどんな手を使ってくるのか注目したいと思う。

 

 

※数字は公式のスタッツではありません。おそらく見逃して正確に測れてない場合もございます。ご了承下さい。