SAS対HOU(第3戦)〜完全攻略したスパーズ〜

第1戦の記事→http://minnesota.hatenablog.jp/entry/2017/05/04/025404

第2戦の記事→http://minnesota.hatenablog.jp/entry/2017/05/07/044603

 

スパーズ対ロケッツ @第3戦

①ガソルの存在

②カワイソレーションの是非part3

③ハーデンに対する守り方part3

ポストプレーの変化part3

⑤ロールサイドの数は少ない方がいい? 

 

 ガソルの貢献

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ダンカン引退と共に加入したガソルは、同じポジションであることからダンカンとしばしば比較されては批難される存在であった。

が、第3戦の彼は違った。

ブロック→4回

シュートミスを誘う→7回

これらは全て、リム周りで起きた回数である。

計11回。得点に換算すると22点分をガソル1人で止めたことになる。

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多くは語らない。

ガソルが足手まといかどうか、その目で見て判断してほしい。

 

②kawhisolationの是非(part3)

引き続きレナードがボールマンをつくべきかオフボールマンをつくべきか検証する。

1.ハーデンとマッチアップ→16/29(55%)

2.ハーデンについている&ボールは別の選手→14/19(74%)

3.ハーデン以外についている→17/27(63%)

 

1.ハーデンとマッチアップ

《ケース1》

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《ケース2》

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ピックでレナードのディフェンス力が完全に無力化されているのが分かる。

 

 2.ハーデンについているが、ボールは別の選手が持ってる時

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ハーデン以外が攻めている時のレナードはどうしているかと言うと、ハーデンにべったりマークすることで「4対4」にさせていた。

驚きなのが74%というその成功率。

4対4なら普通オフェンスの方が有利なのだが、この数字が出たということはハーデン以外の選手の技術力、判断力がシンプルに足りないと言わざるを得ない。ハーデンにこれまで依存しすぎたツケが回ってきたということだろう。ロケッツは少しやり方を変えてかなければこのシリーズ厳しくなりそうだ。

 

3.カワイソレーショされた時

コーナーにいるレナード

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ロールマンのカバー

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クローズアウト

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今回もロールのカバーからクローズアウトまで完璧にこなしていることが見てわかる。

ハーデンにマッチアップしててもピックで無力化されるだけなのと比べるとカワイソレーショされている時の方が、画像からみても数字でみても良い結果がでていると言える。

 

③ハーデンに対する守り方

第2戦の記事を読んでくれた方、覚えているだろうか。

前回の試合でレナードがハーデンに対して2度アンダーをしたことを。そしてその2回とも成功したことを。

とは言えたったの2回。

その時はたまたまハーデンの調子が悪かっただけとも言える。

しかしこの試合で興味深い数字がでた。

それはスパーズがハーデンに対し、「アンダー」を10回もしたことだ。

そしてなにより驚きだったことは、その10回のうち9回成功したことにある。

もう一度言う。『ハーデンに対しアンダーを10回して9回成功した』のだ。

何を言ってるか分からないだって?大丈夫、俺にも分からん。

正気とは思えない。リーグ屈指のシューターにアンダーで守るなど。聞いたこともない。

確かに前回の記事でアンダーを要所要所使うべきと言いはしたが…ここまでとは。

 

と、そんな前置きをしたところで、一つ僕から質問。

ピックに対する守り方って何がベストでしょう。

ウィークサイドに寄せれるアイス?

アウトナンバーを作らないスイッチ?

ハンドラーを潰すヘッジ?

期待値の薄いミドルシュートを打たせれるサグ?

はたまた1人でオフェンスを終わらせれるアンダー?

 

否、答えは「全て」だと僕は考える。

ここでの「全て」の意味は「試合中に全て使うべき」という意味だ。

 

世界最高峰のリーグであるNBA

ディフェンス能力しかり、組織力も超一流であることは間違いない。が、オフェンス力もまた、超一流であることも間違いない。

そんな超一流のオフェンス力に、果たして48分間、同じ守り方が通じるのだろうか。

例えばハンドラーが強いチームであることからヘッジで守ると決めたとしよう。

その守り方で48分間守りきれるだろうか?

そうは思わない。

それに対応できるくらいのオフェンスの組織力があるから、というのも理由の一つだが、もっと問題なのはハンドラーが慣れてしまうということだ。

「ハンドラーの慣れ」とは「ドリブルの慣れ」という意味である。例えばヘッジであればヘッジ用のステップやドリブルのリズムというものがある。他より少し歩幅が狭くなる、ヘッジされた時はそんなリズムだ。

サグの場合はスペースがあるため、どちらかというと歩幅が広くなってドリブルも一気に前に出すことが多い。

というように、ソフトヘッジやアイス、アンダーヘッジ、そしてアンダーも例外なく、それらに対応した「リズム」がある。

つまり何が言いたいかというと、たとえどんなにそのチームにとって効果的な守り方を採用したとしても、1試合通して同じ守り方をするとなれば必ず相手は慣れてしまう、ということだ。であることからヘッジをするなら48分間ヘッジ、というわけでなく、48分間の中で様々な守り方を取り入れることで、ハンドラーのリズムを崩すことが重要であると考える。

(もちろん1試合で同じ守り方を貫くことでコミュニケーションミスや判断ミスは起きづらいことも確かだし、色んな守り方を使うとあうことはそれなりのリスクがあるということも理解している。)

しかし、自身の経験則からも今までオーバーしてきていた選手が急にアンダーしてきたことで歩幅が合わず、フリーのスリーでも外してしまうことも多々ある。そんなことも踏まえると、やはりケースバイケースで守り方を変えられる方がハンドラーからするとやりづらいと言えるだろう。

実際にスパーズの守り方を見てみると、ハーデンのピックに使った守り方はアンダーヘッジ、アイス、スイッチ、ハードヘッジ、アンダー、サグの計6つ。ご覧の通り、色んな守り方をしていたことがわかる。

今回、ハーデンのピックの数は42回で(多すぎるよダントーニさん…)そのうちスパーズが止めた数は27回だった。つまりハーデンのピックは36%しか成功しなかったということだ。

この結果に繋がった要因はやはり守り方の種類を使い分けたことに他ならない。

こう考えるとハーデン相手にアンダーを10回したことも納得できる。

ハーデンからしてみれば、アンダーされるなんて微塵も思ってなかっただろうからね。

常にオーバー+サグやヘッジで対応してきていた選手が急にアンダーしてきたのだ。ハーデンもドリブルのリズムを崩されてしまいうまく行かなかったのかもしれない。

とは言え、アンダーというものに博打感があることも否めないし、恐らくハーデン自体も次戦はアジャストしてくるだろう。

第4戦以降も名将ポポビッチはアンダーを使ってくるのか、はたまた新しい守り方を採用してくるのか、その辺にも注目したいと思う。

 

(参考)

「守り方/成功率」

アイス→3/4(75%)

スイッチ→3/5(60%)

ハードヘッジ→2/5(40%)

サグ→11/18(61%)

アンダー&アンダーヘッジ→9/10(90%)

 

ポストプレーの変化

初戦から仕掛けてきたロケッツ。

第2戦ではそれにアジャストしたスパーズ。

さて第3戦、今回はどんな対策を両チーム練ってきたのだろう。

ポストプレーの成功率→10/21(48%)

 第1戦→0%

第2戦→33%

第3戦→48%

徐々に自分たちのプレースタイルを戻しつつあるスパーズだが、ポポビッチがとった作戦とは。

 

ポポビッチの作戦》

・ハイ&ロー

《ケース1》

ピックを使って注意を引きつける

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オルドリッジのポストプレーを狙う

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これはダミー。もう一度ダニグリがスクリーン

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ハイローでアンダーソンを外に

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パスしたら切れる。この時点でヘルプが誰だか混乱中。

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 《ケース2》

ダニグリをウィングに上げてスペース確保

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スペースを利用してハンドオフを狙う

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それはダミー。狙いはハイロー。

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アンダーソンが上がってるためヘルプができない

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 《ケース3》

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・シール

《ケース1》

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《ケース2》

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前回同様、ヘルプを誰がするか迷わせる動きにハイローを加えたオフェンスを見せたスパーズ。

ハイローをしてないときでもダブルチームをくぐり抜けるシールとパスの精度。

もう完全にロケッツを攻略したと言っても良いだろう。

対してロケッツはこれといった策は無し。

(結局同じ戦術を続けていってここまでやられてしまったダントーニさん、次の試合までに反省した方がいんじゃない?)

おそらく次は守り方を変えてくるはずなので注目したいと思う。

 

 

⑤ロールマンサイドの人数について

 以前こんなツイートをしたのを覚えているだろうか。

ピックをした時、ロールマンサイドの人数、ハンドラーサイドの人数、どちらのサイドが少ない方が効率的であるのか。

持論ではロールマンサイドの人数が少ない方が効率的と答えさせて頂いた。

今回はこの問題も合わせて実際に検証してみようと思う。

 

ロールサイド

0人→5/11(45%)

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1人→11/32(34%)

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2人→20/47(42%)

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3人→4/8(50%)

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ロールマンサイドに「3人」いる時が1番確率は高く、次いで確率が高いのが「0人」となった。

(うーん…困るなあ)

これでは議論が進まないのでもう少し細かく見ていこうと思う。

 

①「シュートの成功率」ではなく「オフェンスの成功率」、すなわちシュートが入らなくても、相手を崩してドフリーで打てたポゼッションも成功とみなすことにする。

そうすると…

0人→6/11(55%)

1人→12/32(38%)

2人→23/47(49%)

 3人→4/8(50%)

なんとかロールマンサイドに選手がいない時が1番ピックの成功率が高くなった。

(と言っても分母が少なすぎて参考とまではいかないか…)

 

チーム別で見るとどうだろう。

《スパーズ》

0人→3/7(43%)

1人→8/13(62%)

2人→11/20(55%)

3人→1/2(50%)

《ロケッツ》

0人→3/4(75%)

1人→4/19(21%)

2人→12/27(44%)

3人→3/6(50%)

 

うーん…バラバラ

共通してるのは「ハンドラーサイド1人、ロールマンサイド2人」のピックが1番多いことくらいか。

 

続いてロールマンサイドの人数と選択したプレーを組み合わせてみた。

 

0人+キックアウト→2/3(66%)

0人+ドライブ→2/4(50%)

0人+ロールマン→無し

0人+ミドル→2/3(66%)

0人+スリー→0/1(0%)

ロールマンが「無し」となっているが、これはロールサイドにヘルプの選手がいないため、ロールマンのディフェンダーはロールマンにパスさらないようにディフェンスするため、パスが通せないのが要因だろう。

 

1人+キックアウト→2/9(22%)

1人+ドライブ→1/6(17%)

1人+ロールマン→7/8(88%)

1人+ミドル→1/1(100%)

1人+スリー→2/6(33%)

1人+ポップアウト→0/3(0%)

ハンドラーサイドに2人も選手がいるため、中々ドライブは成功せず。逆にロールマンの成功率は1番高かった。

 

2人+キックアウト→5/18(28%)

2人+ドライブ→10/12(83%)

2人+ロールマン→4/6(67%)

2人+ミドル→3/5(60%)

2人+スリー→1/4(25%)

ドライブの成功率が飛び抜けているが、これはここ数年で守り方が変わってきたからだろう。本来ウィークサイドへのドライブはコーナーのディフェンダーがヘルプに行くことが基本となっていたが、コーナースリーの確率が上がってきたことによって、最近ではコーナーのディフェンダーはヘルプに行かないのが主流になっている。ドライブがしやすくなっているのはこれが原因だろう。

ロールマンサイドに選手が全員いるよりも、ハンドラーサイドに1人いてくれて、ロールマンサイドの人数を1人減らしている時の方がハンドラーは活きるのかもしれない。

 

3人+キックアウト→2/2(100%)

3人+ドライブ→0/1(0%)

3人+ロールマン→0/1(0%)

3人+スリー→2/4(50%)

ロールマンサイドに3人もいたらロールマンの成功率はそりゃ低いわな。

 

はい。今回、初の試みでしたが、まだまだ分からないことだらけでした。

もっと続けて検証していかないと何とも言えませんね。

あとは、ディフェンスの守り方がロールマンサイドの人数のそれぞれの成功率とどう関係しているのかも調べないと完璧な答えは出てこなそう。

 

疲れたので不敵な笑みを浮かべるダントーニを最後にお別れ。

 

次はダントーニの番ですぜ。

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